ホルヘ・ルイス・ボルヘスの「マインド・ツリー(心の樹)

df 先祖は南米諸国の独立にかかわった偉人・軍人たち      top (2)(3)(4)

 

伝奇集 (岩波文庫)
伝奇集 (岩波文庫)J.L. ボルヘス 鼓 直

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stars世界の真実に切り込むボルヘス流千夜一夜
stars破局しているのは確かだが、決して破滅はしない。
stars記憶の人・フネス
stars膨大な書物の館の、短い物語。
stars未来を予言した本

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砂の本 (ラテンアメリカの文学) (集英社文庫)
砂の本 (ラテンアメリカの文学) (集英社文庫)ボルヘス 篠田 一士

集英社 1995-11-17
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star離れ業
star引用は、しませんが、
star《無限》の書

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夢の本
夢の本J・L・ボルヘス 堀内 研二

国書刊行会 1992-10
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創造者 (岩波文庫)
創造者 (岩波文庫)J.L. ボルヘス Jorge Luis Borges

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stars印象に残った作、二篇
stars創造者ボルヘスの紡ぐ夢の世界へようこそ
starsボルヘスとの再会
stars創造力って想像力。
stars詩人ボルヘス

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生後まもなく移り住んだパレルモの街

 

 

悪党列伝
 ホルヘ・ルイス・ボルヘス 中村 健二

晶文社 1976-06
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ボルヘス伝ボルヘス伝
ジェイムズ ウッダル James Woodall

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ハックルベリー・フィンの冒険〈上〉 (岩波文庫)
ハックルベリー・フィンの冒険〈上〉 (岩波文庫)マーク トウェイン Mark Twain

岩波書店 1977-08
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star筏の冒険
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ドン・キホーテ〈前篇1〉 (岩波文庫)
ドン・キホーテ〈前篇1〉 (岩波文庫)セルバンテス Cervantes

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starsなぜに『ドン・キホーテ』は小説の王たりうるのか

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ドン・キホーテの旅―神に抗う遍歴の騎士 (中公新書)
ドン・キホーテの旅―神に抗う遍歴の騎士 (中公新書)牛島 信明

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映画『Don Quijote -ドン・キホーテ de la Mancha』より  

 

 はじめに:

 アルゼンチンの首都ブエノスアイレスに南米の軍人の末裔として生まれ落ちたボルヘ
 ス少年が、<迷宮>をうたった世界的大作家ホルヘ・ルイス・ボルヘスとなっていく
 過程は極めて興味深いものがあります。ボルヘスにおいて、故郷アルゼンチンの何の
 変哲もない街角が、<迷宮>への入口になります。その「発見」は、少年期に父の眼
 の治療のために訪れていた、そして8年にわたることになったヨーロッパ滞在がもた
 らしたものでした。
 ボルヘスは<迷宮>の基盤は、円環的時間にあることを感得した時、不死の時間形式
 や有限を無限にするからくり、歴史上の人物と虚構の人物
(歴史と伝説すらも)を混
 交させ現実と夢を交錯する方法にいたります。

 ボルヘスのその人の「マインド・ツリー(心の樹)」は、個の樹として「有限」です
 が、「無限」のようでも
あります。ブエノスアイレスに生きたその「心の樹」は、
 「現実」にありましたが、「夢」でもありました。宇宙の歴史のごとく、周期的に回
 帰する「魂の樹」でもありました。
 ボルヘスは自身の「魂の樹」を探訪するため、ほとんどが軍人だった眷属
(けんぞく)
 
たちや、街のガウチョたち、インディオたちの物語に分けいっていきました。そして
 生まれて半世紀余たった頃、ボルヘスの名が世界に知れ渡った頃には、自身の「視
 力」は衰え、見えなくなっていたのです。
 「魂の眼」で世界と宇宙を見はじめたボルヘスの「心の樹」を一緒に感じてみましょ
 う。ボルヘスの「心の樹」を知った後、『永遠の歴史』『不死の人』『伝奇集』など
 ボルヘスの著作に描き込まれた、見えないものが、同じく私たちの「心の眼」によっ
 て少しづつ
 「見えてくる」ようになってくるにちがいありません。

 

 

 

 

 「ならず者」が跋扈するパレルモの記憶

 南米の大作家ボルヘス(Jorge Luis Borges)は、突然、アルゼンチンに産声をあげ
 たわけでなく、南米のアルゼンチン辺りに”根づいて”いった家系の一房から、ぷる
 りと実がなった感じとも言えます。1899年8月24日、アルゼンチンの首都ブエノスア
 イレスの中心部にある母方の
(父方ではなく)祖父の小さな家に、その実であるホル
 ヘ・ルイス・ボルヘスは生まれ落ちました。
 ブエノスアイレスの北方には広大な原っぱがひろがっていましたが、生後まもなくボ
 ルヘスはそのなかのパレルモ
(現在は緑多い住宅地)に移り住んでいます。このパレル
 モこそが、後にボルヘスの短篇のあちこちに登場する「ならず者」が跋扈
(ばっこ)
 
する町、ナイフさばきの達人や礼儀正しいが貧しい者が暮らす町でした。父は息子に
 間もなく消えてなくなるので軍服や兵士の姿、旗や僧侶をしっかり目に焼き付けてお
 きなさいと諭
(さと)したといいますが、多くは後々まで姿を変えて残りました(消
 えてしまったのは、ボルヘスが失明したためでしたが、記憶の中に存在するようになります)

 また隣人には最初のアルゼンチンの詩人エバリスト・カリエゴが住んでいたのは偶然
 なのでしょうか。パレルモの卑俗さは、詩人カリエゴに、そして少年ボルヘスに、文
 学のエキスと、文学の世界への入口を与えます。

 

 

 

 母から受け継いだ、人に対する寛容や人の長所を見いだすこと

 父から英語を学んでいた母レオノルは、次第に英語の本に親しみ原書で読むようにな
 っていました。後にホーソンやメルヴィル、ヴァージニア・ウルフ、フォークナーの
 短編、ハーバート・リードの美術論などを翻訳しています。父の死後には、ウィリア
 ム・サロイアンの『人間喜劇』を翻訳し表彰されるほどの翻訳家になっています。
 ボルヘスは「文学生活を密かに効果的に育んだのは実は母だった」とも述懐してい
 る。ボルヘスは母レオノルから文学面以上に、人に対する寛容や人の長所を見いだす
 こと、良き人付き合いの術を受け継いだといいます。

 

 数千冊の本があった父の書棚と、父方の家系の文学的伝統

 しかし、ボルヘス家の家系は、実際には軍人ばかりだったわけではなく、ボルヘスも
 それほど肩身を狭く感じる必要もなかったようにおもう。父がそうだったように、父
 方の家系にはたっぷり文学的伝統があったのです。父の大叔父ラフィヌールは、アル
 ゼンチン最初の詩人の一人でした。父の母方の祖父はアルゼンチン初の英字新聞「サ
 ザン・クロス
(南十字星)」のエディターでした(この人物エドワード・ハズラムは当時
 の革新的な眼科手術を受け医学誌に掲載されたが、彼の眼の疾病は遺伝性のもので息子、そして
 孫のボルヘスにまで遺伝した)
。また父自身も読書の達人だけでなく、アルゼンチンの
 エントレリーオス地方の歴史を扱った小説『首領』やソネット集を書いて出版してい
 ます。フィッツジェラルドの『オマル・ハイヤーム』は翻訳しています。

 父の書棚は、まさに父方の家系の文学的伝統で埋め尽くされていました。大きな部屋
 全体にガラス張りの棚が全面に置かれ、少なくとも5000〜6000冊もの本が隙もなくつ
 まっていました。19世紀初頭、ブエノスアイレスのどんな本屋でもなかなかお目にか
 けない本棚だったはずです。


 ボルヘス自身、人生で最も重要だったのは「父の倉庫」と答えています。ボルヘス少
 年が「父の倉庫」から取り出して最初に読んだ本はマーク・トウェインの『ハックル
 ベリー・フィンの冒険』でした。2冊目もマーク・トウェインの『へこたれるもん
 か』だったといいます。ウェルズの『月世界旅行』やスティーブンソンの『宝島』あ
 たりがそれに続き、エドガー・アラン・ポー、ルイス・キャロル、グリム『童話集』
 ディケンズ、ロングフェロー撰集、『ドン・キホーテ』、『千夜一夜物語』へとなだ
 れこんでいきました。ボルヘス少年にとってそれはまさに「知の狩猟」ともいえるも
 のでした。ちなみに多くは英語の原書で読み、『ドン・キホーテ』はスペイン語で読
 んでいたといいます。
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